ここ十数年、カーブス、エニタイムフィットネス、チョコザップなど、いろいろなフィットネスクラブ・ジムが誕生し、全国のフィットネス参加者は200万人も増加しました。
一方、スタジオやプールを併設している総合型フィットネスクラブの会員数は減るばかりです。
フィットネス業界では、フィットネスへの人口参加率を3%から10%へ高めるモットーとして3to10(スリートゥテン)をかかげていますが、思うように伸びていません。その理由はいったいどこにあるのでしょうか?
フィットネス業界も、外食産業のようになって来ました。
外食産業で拡大しているのは、ハンバーガー、牛丼、回転寿司などです。
近年出店されるフィットネスクラブは、24時間型ジムばかりです。
ジム、スタジオ、プールのある総合型クラブの月会費は10,000円前後でしょうか。
24時間型ジムでは7,000円前後でしょうか。それどころか、最近では3,000円の24時間型ジムも出来ています。
その差、わずか3,000円です。
その差額には、スタッフの接客、インストラクターの指導、プールやお風呂の設備、ウェアやサプリメントのプロショップなどが含まれています。
「こんなに設備やサービスがあるのに、どうしてうちに入会しないんだ!」と嘆いている経営者や支配人も多いのではないでしょうか。
その理由は、お客様にとって、そういった設備やサービスが3,000円の価値もないからです。
もしくはその価値が、きちんと伝わっていないのではないでしょうか。
同じ業界人としても、私も寂しいです。
経営者や支配人であるあなたも私も、お客様がフィットネスクラブのどこに価値を感じているのか、しっかり耳を傾けなければなりません。
ただし「耳を傾ける人を間違ってしまう」と、もっと大変なことになってしまいます。
世界でもっとも売れているハンバーガーはマクドナルドですが、世界でもっともおいしいハンバーガーはマクドナルドではありません。
フィットネスクラブで行いがちな間違いを、5つピックアップしました。
もしよろしければ、ご一読ください。
1.オリエンテーション
ご入会者向けに説明会を実施しているフィットネスクラブ様は多いと思います。
しかしその内容の多くが、施設のルール説明やマシンの利用説明のみになっています。
若年層であればまだしも、なぜ健康増進でご入会された中高齢者が「したくもない筋トレをして、疲れはてないといけない」のでしょうか?
筋トレは中高齢者にとって重要ですが、ご入会したばかりのお客様にやっていただくことではありません。
貴フィットネスクラブ様は、きちんと入会アンケートは書いていただいていますか?
その回答の多くは、何をご希望なさっているのでしょうか。
フィットネスクラブにご入会されたお客様の半数近くは1年と続きません。
それほど入会前のイメージと、ご利用時にギャップがあるということです。
重要なのは、運動を続けていただくことではないでしょうか。
まずは施設やプログラム、スタッフとのコミュニケーションを楽しんでいただいて、「ああ、来てよかった!」と、気持ち良く感じていただくことが重要ではないかと思います。
2.タイムスケジュール
「地域最大!」「スタジオレッスン週100本!」などと謳っているフィットネスクラブ様も多いです。
確かに人目を引くためのプロモーションとしては、間違いではないでしょう。
しかし運動を始めようと思っている方々にとって、価値はありません。
夜19時台の多くの方々が通いやすい時間帯に、強度と難易度が高いスタジオレッスンをフルラインナップしているクラブもあります。
それで喜ぶのは、一部のヘビーユーザーのお客様だけです。
高い集客率とは「同じ方々が何度も参加している」ことではありません。
貴フィットネスクラブ様のターゲットは、その方々で合っていますか?
そしてきちんと収益は上がっていますでしょうか。
もし、「地域の方々を健康に!」と願うのであれば、運動をしたことがない人ほど、通っていただきたいですよね?
そんな方々の多くは、いきなり60分も運動することはできません。
いまのフィットネスクラブを見ると、私の頭には「お客様が相撲取りばかりの食べ放題の店」が浮かんでなりません。
スタジオの担当者がレッスンチェックをしていない施設も多いようです。
まるで店先の野菜を品定めしてない八百屋のようです。
「私はヨガの知識がないので、参加しても判断できません」
専門家の視点はいりません。いちお客様としての感想で十分です。
デイ会員やウィークデイ会員など、時間や曜日に利用制限がある場合もありますよね。
そんなときは、それぞれのお客様に「ほどほどに」ご満足いただけるよう、スケジュール・イン・スケジュールという視点が重要です。
3.マシンジムレイアウト
もともとフィットネスクラブのレイアウトは、ボディビルジムが基本になっています。
いまも継承されており、胸のトレーニングマシンが何台も並んでいたりします。
いったい何割のお客様が「何台も何セットも胸の筋トレをする」のでしょうか?
ましてや30キロのダンベルなど、誰が使うのでしょうか。
ランニングマシンも、ずっとランナーで埋まっていませんか?
そもそもトレーニングマシンなんて、誰も触りたくありません。
欲しいのは健康やダイエットという結果であり、できれば筋トレなんてしたくないのです。
「最新の〇〇マシン、新導入!」
それはお客様にとってどんなメリットがあるのでしょうか?
謳うべきは、お客様にとっての価値ではないでしょうか。
トレーニングマシンのパネルには、「ラットマシン、広背筋」と書いてあったりしますが、それよりも「背すじをまっすぐにし、逆三角形の体型や細いウエストをつくります」のほうが良いと思いませんか?
ランニングマシンの説明パネルも、「このボタンを押してください」といった使用方法だけでは不十分ですよね。
エルマー・ホイラーの言葉を借りれば、「シズルを売れ!」ということです。
ステーキを売るのであれば、その肉質について語るのではなく、香りや焼いている音を聞いていただくということです。
4.商品開発(会員種別)
この記事については、すべてメタファ(比喩)で表現しています。
タイの尾頭付を10,000円で売っていますが、なかなか売れません。
そのためA店の店主は切り身で売ろうと思いつきます。
- 頭:2,000円
- 胴体:6,000円
- 尻尾:2,000円
合計10,000円なのでいいだろうと。
結果どうなったかというと、6,000円の胴体ばかりが売れ、お頭はちょっと売れましたが、尻尾は売れ残って、損をすることになりました。
B店の店主は、
- 頭:1,500円
- 胴体:7,500円
- 尻尾:1,000円
同じく合計10,000円ですが、完売しました。
商いがうまいのは、B店の店主ですね。
胴体はすぐ売れてしまったので、次回は8,000円にするそうです。
もっというと、頭も尻尾も完全なアラにしてはいけません。
少しだけ身を付けておく工夫が重要です。
けして魚屋の話ではありませんよ(笑)
5.ブランディング&マーケティング
私の住まいから2km圏には、フィットネスクラブやジムが20店舗以上あります。
時々チラシも入りますが、店舗名を差し替えれば、どこがどこだか解りません。
設備もサービスも、どこでも同じです。
フィットネスクラブは往々にして、「Everybody is nobody」になっています。
誰でもどうぞ!といいつつ、誰も来ないということです。
確かに高校生も来れば、高齢者も来るでしょう。
でもラブレター(チラシ)は、皆さんに向けて書いてはいけません。
そして放課後(訴求時期)に、そっとゲタ箱(販促媒体)にいれてください。
あなたがもらったラブレターに「いつでも誰でも愛してます」って書いてあれば、その人に会ってみたいと思わないですよね。
このようなお話は、ペルソナ・マーケティング、カスタマ―・マイオピアなどで調べてみると良いでしょう。
入会金無料!初月度無料!
次々フィットネスクラブを変えていれば、ずっとタダで使えるのではないかと思います。
キャンペーンは、値引けばよいというものではありません。
ポイントは「お得感」、本当にお得である必要はありません。
「会費は〇〇円だけど、月〇回つかって、スタジオに〇回参加して…」と原価計算しているお客様はいません。
「地域最安値」という理由でお越しいただいて、経営者や支配人であるあなたは嬉しいですか?
24時間型ジムは参入障壁が低く、お金があれば誰でも出店できます。
施設や設備などのハードでは、フィットネス事業の差別化はできません。最後は価格競争におちいり、値下げの我慢大会になってしまうでしょう。
フィットネスクラブの差別化は、サービスやプログラムなどのソフトが重要です。
御社には、御社にしかできない価値提供があるはずです。
よろしければ企業・団体様向けのサービスをご覧ください。もしお悩みであれば、お気軽にご連絡いただければ幸いです。