出張の折に、はじめて支配人を勤めたフィットネスクラブと、海に近い町を巡って来ました。
当時はとにかく仕事で精一杯で、遊んでいる余裕なんてありませんでした。
25年の時が過ぎて、私が何を感じたのか。
私が実際に体験していることを通して、人生を楽しむことやワークライフバランスについてのヒントを、皆さんと共有していきたいと思っています。
営業会議で叩かれた後、こころを癒していた景色です。
もし当時の自分がいれば、いろいろと相談にのってあげたいです。
30才ではじめて支配人を務めましたが、運営や経営について指導してくれる人はいませんでした。というよりも、社内に指導できる人がいなかったのでしょう。
フィットネスクラブの支配人や経営層は、インストラクターやフロントスタッフの繰り上がりが多いのです。
運動や接客について学んだことはあっても、店舗運営とかマネージメントについては学んでいないのです。
すると、どうなるか。
いろいろやっていくなかで品質が高まっていく「量質転換」や、やってみてダメであれば違うことを試す「トライアル&エラー」をしていくことになります。
フィットネス業界の現実です。やはり経営は、経営を学んだ人にしていただいたほうが良いですよね。
住んでいた辺りを散策すると、美味しそうな店や楽しそうな場所がたくさんあり、「ああ、もったいないことをしたなぁ」と後悔しきりです。
忙しくて散策している時間がなかったこともあるけれど、25年の間に私のキャパシティが広がり、いろいろなものに興味を持てるようになったことも大きいでしょう。
年を重ねると人生が豊かになるとは、こんなことなのかもしれません。
今回、どうして私がここに立ち寄りたかったのだろう?と自己分析をすると…
一つは、仕事ばかりをしていて失ったであろうものを、少しでも取り戻したかったのかもしれません。
もう一つは、希薄になってしまった過去を確認し、「かつて自分はそこに存在していたのだ」と思い出したかったのかもしれません。
当時の通勤路を通ってみたり、働いていたテナントに入ってみると、気持ちが昂ります。
自分へのご褒美に、良く立ち寄った神戸のラーメン屋です。
ラーメンを食べていると、隣に赤ちゃん連れのご夫婦が座ります。
私は、妊娠中の奥さんを連れての転勤でした。
知り合いもいない、職場もない、そしてはじめての出産、そんな彼女は本当に孤独で不安だったと思います。
しかし、若かった私は思いやることができませんでした。
もっと子育ても楽しめば良かったと、後悔が残っています。
こっそり働いていた店をみて帰ろうとすると、なんと25年の時を経て、当時のスタッフと目が合ってしまいます。
「なんで来るって連絡してくれないんですか!」
たくさんのスタッフにつかまってしまった私は、「ずっと連絡もしないで申し訳ないことをしたなぁ」「この店だけでなく、私はたくさんの知り合いをないがしろにしているのではないだろうか」と反省しました。
マシンジムやスタジオで佇んでいると、忘れていた当時の記憶が蘇ります。
チンピラに脅されたり、スタッフのトラブルの仲裁をしたり、どろぼうを追いかけたりと、思い出すのは苦労したことばかり。
でも、先のスタッフは「高田さんがいたころは本当に楽しかったです」といってくれて、ありがたいばかりです。
施設責任者の仕事で大変なのは、経営よりもトラブルやクレーム、事故対応です。
店が営業中である限り何が起こるかわかりませんので、休みの日でも酒は一滴も呑めませんでした。
当時住んでいたアパートにも立ち寄ってみました。
高台にあり、広いテラスと屋上もあって、海と橋が一望できます。
ここに住んだとき、はじめて「この辺りに家を買ってもいいかなぁ」と思いました。
私は現在宮古島に住んでいますが、自然が多く、海の近くがいいなと確信したのは、このときだったのでしょう。
今回わずか数時間の滞在でしたが、自分の中で何か整理がついたような、線を引けたような気がします。
人生、良いことも悪いこともいろいろ体験してみないと、「本当の自分」を知る機会はなく、一生が終わります。
人は皆、「私はこんな人間である」と思って日々過ごしていますが、たいして当てになりません。
人生を左右するような大きな選択をしたとき、はじめて「本当の自分」は現れます。
やりたいのか、やりたくないのか、するのか、しないのかが、はっきりするんですね。
「本当の自分」に会うのは新鮮であり、びっくりすることもありますが、結果としてはより自分という人間が落ち着き、その後何かあっても振れることが少なくなるようです。
その後、私は“ いやいや ”本社勤務となりますが、それを断っていれば成長も少なく、人生もここまで開けていなかったでしょう。
もちろん、代わりに失ってきたものもたくさんあるのでしょう。
人は2つの人生を同時に生きることはできません。
「あっちの人生のほうが良かったんじゃないだろうか」
でも、そっちの人生のほうが、もっと悪かったかもしれません。
人は「今の人生で良かった」「自分は常に最高の選択をして来たのだ」と信じるほうが得策だと思っています。
これまでの人生を後悔している人は、過去を上書きすると良いかもしれません。
もちろん、できること、できないことはありますが、あなたが過去だと思っていることは、事実にもとづくあなたの「解釈」でしかありません。
昔は何もなかった海岸線に、へばりつくように家や店が立ち並びます。
ちょっと海岸を歩きたくても、車を止めるところも、腰かける場所もありません。
宮古島であればどこでも止め放題、座り放題ですが、都会ではリラックスするのも一苦労です。
あいにく今日は週末で、スーパー銭湯も大混雑だろうと、25年にしてはじめて地元の銭湯へ向かうことにします。
電話をするとお婆さんがとても感じよく、幸い駐車場もあるという。
銭湯について番台でお金を払うと、「ホットレモンにしてくださいね」と鮮やかなレモンをいただいた。
湯舟に入ると、柚子ではなくレモン風呂が。
そうか、今日は冬至か。
露天風呂まであって、こころも体もほぐれました。
帰りがけには「いつもご利用ありがとうございます」と、はじめてなのに声をかけていただく。
そんなこころ遣いが、うれしいじゃないか。
久しぶりに、良い「旅」になりました。