「手軽にできるダイエット」として、最近として、最近、ファスティングの人気が高まっているようです。
めんどうなカロリー計算、食べものの栄養素について理解する必要もありません。
いっそ「食べない」という選択のほうがチャレンジしやすいかもしれません。
効果や安全性はどうなのでしょうか。

「ファスティングで体重が落ちる」ことは、確かにその通りです。
その他、体調が良くなる、デトックス効果などの「可能性」もあります。
しかし、1日に必要なカロリーや栄養素が不足することも、また事実です。
体調不良や病気の原因になることもあるでしょう。
1.ファスティングとは?
ファスティング(Fasting)を訳すと断食であり、朝食のブレックファスト(Breakfast)は断食を破るということになります。
断食と聞くと、食べものを食べない修行のようなイメージがありますが、ファスティング=ダイエットとして行われることが多いようです。
断食・ファスティングに関する研究は国内外で行われており、健康やダイエット、病気の改善に効果があるというデータも出て来ています。
ファスティングには、いろいろな種類があります。
短いものだと十数時間、長いものだと1ヶ月近く行います。
内容も、体に良くないとされるものをやめる、少量の食事を口にする、水以外すべて口にしない、特別な食材をとるなど、たくさんの種類があります。

ファスティングについて調べていると「独断でのファスティングは危険です。専門家の指示を仰ぎましょう」と注意が促されています。
ファスティングや断食の団体や指導者はいても、国ではファスティングの効果を認めていません。はたして「専門家」とはなんでしょうか?
2.ファスティングには、どのような効果がありますか?
一般に言われている効果として、以下のようなものがあります。
・体重が落ちる。
・体調が良くなる。
・免疫力アップ。
・肌荒れの改善。
・デトックス効果。
ここについて、もう少し深堀りしてみましょう。

体重が落ちる
ファスティングをして食べる量が少なくなると、1日の摂取カロリーも減ることになります。
いつもより摂取カロリーが少なくなると、体は自身の脂肪や筋肉を分解してエネルギー(カロリー)にします。
そのため、体脂肪や筋肉が分解されますので、結果として体重は落ちます。

落ちたのが体脂肪であれば良いのですが、ファスティングで飢餓状態となった体は、体脂肪も筋肉も一緒に分解してエネルギーにしてしまいます。
そんなとき、「筋肉は落としてはいけません」とサインを送るのが、ダイエットでの筋トレの役割です。
一般にダイエットを行うときでも、生きていくための最低限のカロリーである基礎代謝を下回ることは危険とされています。
基礎代謝は体重×24キロカロリーとされていますので、体重60キロの人であれば1440キロカロリーになります。
多くのファスティング団体や指導者が、基礎代謝を下回るカロリー摂取の指導をしているのは、問題ではないでしょうか。
体調が良くなる、免疫力アップ
これらの理由については、よくわかっていないようです。
いつでも食事ができる現代と違い、人類も飢餓の歴史の中を生きてきました。
そのため、エネルギーの少ない状態でも食べものを取りにいったり、敵に襲われたときに逃げられるようにするためのシステムが備わっています。
例えば、人が動くエネルギーである血液中のブドウ糖が不足すると、アドレナリンというホルモンが出て、ブドウ糖を作り出します。
また、筋肉が動くためにはカルシウムが必要ですが、体内のカルシウムが少なくなると、骨を分解してカルシウムを作り出します。
ファスティングによって白血球が多くなり、免疫力が高まることなどもわかってきています。
いずれも「体調が良くなった」と感じるかもしれませんが、これは危険な状態を何とかしようと、体が無理をしている状態でもあります。
私自身もファスティングをすることで、これまでにないような体調の良さを実感しています。
それを体感したのは、ファスティングに入る前のアルコールやカフェインをやめた期間中です。ファスティング中ではありません。
これをファスティングの効果とするのか、それともアルコールをやめて肝臓の機能が戻り、解毒能力が上がった、カフェインをやめて、ストレスホルモンであるコルチゾールが少なくなった効果なのかでいうと、私は後者だと思っています。


ファスティング中に体調がわるくなると、体調が良くなる前にいったん悪くなるという理論で「それは好転反応です」という指導者がいます。
その場合はそれはなぜなのか、質問してみましょう。
肌荒れの改善、デトックス効果
ファスティングをした方の中には、「お化粧の乗りが良くなった」「肌荒れが治った」などの声もあるようです。
ファスティング団体の広告やホームページでは、「デトックス」「体内の毒を排出」などの記事を目にします。
なぜそのような効果が現れるのか、体内の毒とは具体的に何なのか、そして毒が排出されたことをどのように確認するのか、といった具体的な説明を目にすることは少ないのではないでしょうか。
体内に溜まる毒とは、水銀やアルミニウムなどの重金属を差すことが多いようです。
重金属は水や食べもので体内に取り込まれますが、最後は細胞内の脂肪に溜まります。
ファスティングによって体脂肪が落ちれば、その中に含まれる重金属も一緒に排出されることになります。
これがファスティングがデトックスに効果があるといわれる理由です。

私は体内の重金属検査もしたことがあります。
重金属は髪の毛にも排出されるため、ある期間中の排出量がわかります。
アメリカの検査で7万円ほどかかりますので、気軽にはできません。
3.ファスティングと腸内環境の関係
ファスティングにより小腸に食べものが入ってこなくなると、小腸のかべの細胞が一度剥がれ落ち、新しい細胞に生まれ変わることが確認されています。
小腸は食べものに含まれる栄養素を、血管を通じて体内に直接取り込むという重要な役割を担っています。
解剖学的には、腸の中は体外とみなされます。
リーキーガットとは?
リーキーガットは日本語で「腸漏れ」です。小麦のグルテンなどが原因となり、腸壁の細胞同士のつながりが緩んでしまうことで、細菌などが血液中に侵入してしまう状態を指します。
リーキーガットの原因となるカンジダというカビも体内に存在しますが、ファスティングをすることで、このカビの栄養源がなくなり、活動が抑制されることも効果の一つとして考えられています。
リーキーガットによって傷ついた腸壁が治れば、栄養素の取り込みはスムーズになり、細菌などの侵入はストップすることができるといわれています。
4.オートファジーとは何でしょうか?
近年、ファスティングの効果として注目されているのが、オートファジー(自食作用)です。
2016年に東京工業大学の大隅良典博士がノーベル賞を受賞しています。
オートファジーの働き
自分の細胞で合成に失敗したタンパク質や古くなって分解されたタンパク質を、リサイクルして新しい細胞にする働きです。細胞内のリサイクル業者というとわかりやすいでしょうか。
またオートファジーには、細菌やウィルスなどを排出する作用もあります。

人でいうと、古くなった皮膚や粘膜が自然に剥がれ落ちることや、カエルでいうと、オタマジャクシの尾がなくなることをアポトーシス(細胞の自然死)といいます。
オートファジーは細胞内で行われる、似たような作用です。
オートファジーの重要性
人が1日に食べる肉、魚、豆などのタンパク質は50~100グラムほどありますが、体内でリサイクルされるのは200グラム以上といわれます。
オートファジーがないと、私たちは体を維持できないことになります。
オートファジーとファスティング
このオートファジーを利用して体脂肪を燃やすのがダイエットであり、細胞に溜まった重金属を排出するのがデトックスです。
私自身も、実際に2種類のファスティングを試したことがありますが、いずれも危険性があると判断し、私がお客様にファスティングをおすすめすることはありません。
もしよろしければ、私の実体験も含めてお読みいただけるとうれしいです。