水分を除くと、人の体の40%はたんぱく質です。
筋肉や内臓、髪、爪、血液、酵素などもたんぱく質でできています。
そのため、たんぱく質が不足すると体が「欠陥住宅」となり、筋肉量の低下、内臓の消化機能が落ちる、紙がパサつくなど、さまざまな不調が現れます。
健康食品としてのプロテインがあふれていますが、ちゃんと効果はあるのでしょうか?
1.お肉、魚、豆、牛乳、すべてたんぱく質ですか?
たんぱく質はすべての生物が持っている物質です。
筋肉や血液、酵素などのもとになり、私たちの体を構成する重要な成分です。
肉、魚、豆、乳製品など、たんぱく質を多く含む食材もそのまま「たんぱく質」といわれる場合があります。
たんぱく質が不足すると、材料不足で体が作れず、消化もできません。これは、食べものを消化する消化酵素もたんぱく質でできているためです。
そのため、マイナスのスパイラルにを引き起こして、「欠陥住宅」のような体になってしまいます。
そうなると、たんぱく質は筋肉や内臓などに優先して使われ、髪、肌、爪などにダメージがでやすくなります。
一般に肉や魚など動物性たんぱく質は、豆などの植物性たんぱく質よりも良いとされています。それはなぜでしょうか。
肉でも豆でも、食べたたんぱく質は体内でアミノ酸に分解されて、吸収されます。
そして体の細胞で、そのアミノ酸がたくさん結びついて、体のパーツ(筋肉や内臓など)に合ったたんぱく質を作り直します。
アミノ酸のうち9種類は、体内でつくれないアミノ酸で「必須アミノ酸」(EAA)といわれます。
この必須アミノ酸のバランスを「アミノ酸スコア」といい、最もよいものが100点です。この点数でたんぱく質の質が良いか悪いかが決まります。
植物性たんぱく質はヘルシーなイメージがありますが、アミノ酸スコアは低く、吸収率は良くありません。
そのため、植物性たんぱく質を食べる場合は、動物性たんぱく質と一緒にとることで吸収率を高めることができます。
例えば、納豆や、豆腐のおみそ汁+卵かけご飯などです。
植物性たんぱく質と動物性たんぱく質の違いは、含まれるアミノ酸の種類と量です。
そして、植物性たんぱく質は繊維質が多く、動物性たんぱく質は脂質が多くなります。
繊維質が多いため、植物性たんぱく質(ソイ=大豆プロテインやピー=エンドウ豆プロテインなど)は、ダイエットに向いているように思われるかもしれませんが、実際には動物性たんぱく質と変わりません。
たんぱく質も、糖質や脂質が足りないとエネルギー源となりますが、そのときは含まれる窒素を排出しないといけないため、肝臓の負担となります。そのため低糖質ダイエットなど食事に含まれるたんぱく質の割合が多くなると、汗や尿が臭うことになります。
エネルギー源として、糖質のほうがすみやかであり、脂質のほうが効率が高く、いずれもたんぱく質よりも適しています。
低糖質ダイエットが間違っていることが、おわかりいただけるかと思います。
2.昨日は焼肉食べ放題、今日はたんぱく質はいらないですよね?
もし焼肉を300グラム食べたとすると、たんぱく質は60グラムくらいになります。
1日に食べるエネルギーの25%を、たんぱく質でとりましょう。
これは成人男性2000kcal/日として500kcalになり、量にして125グラムになります。
肉や魚に含まれるタンパク質は20%くらいですので、125グラムのたんぱく質をとるには毎日625グラム(1ポンド以上!)もステーキを食べなければなりません。
実際には、ご飯や野菜にもたんぱく質は少しずつ含まれていますので「ちりつも」となり、そこまで極端なことはしないで大丈夫です。
たんぱく質は体のなかでリサイクルされていますが、日ごろの運動量が多い人ほど壊される量が多くなり、たくさん食べることが大事です。
厚生労働省では、毎日たんぱく質を体重あたり1グラム以上食べるよう指導しています。
例えば体重65キログラムの男性であれば、1日に65グラム、毎食20~30グラムになります。
運動する人はたんぱく質の消費も多くなりますので、ジョギングなど持久性系であれば体重あたり1.5グラム、筋トレなど無酸素運動系であれば2グラムを目安にするといいでしょう。
たんぱく質も体が必要とする量より多く食べれば、体脂肪として蓄えられます。
また、たんぱく質(特に動物性)には脂質も多く含まれていますので、調理前にカットするなど気をつけてくださいね。
食べ過ぎたたんぱく質を排せつするときや、低糖質ダイエットでエネルギーに作りかえるときは肝臓の負担となり、痛風(ぜいたく病)の原因にもなります。
プロテイン入りの健康食品や低糖質ダイエット(=結果としてたんぱく質が多くなる)がはやっていますが、適正な量を守りましょう。
3.筋トレした後はプロテイン、間違いないですよね?
たんぱく質は糖質(グリコーゲン)や脂肪(体脂肪)とちがって、体に蓄えることができません。
1日3食を通して食べることが大事で、朝ご飯は卵と納豆、昼ご飯は焼き鮭と豆腐、夜ご飯は焼き肉など、毎食食べるようにしましょう。これで合計70グラムほどになります。
たんぱく質が足りていないと思ったときは、具材の入ったおにぎりやサンドイッチ、プロテインバーを食べるのもよいですね。
3~4時間以上、食事の間隔が開いてしまうとき(昼ご飯と夜ご飯の間など)がおすすめです。
たんぱく質をとる最良のタイミングは、運動のすぐ後といわれています。
運動によって成長ホルモンの分泌が高まり、壊れてしまった筋肉を回復させるためです。
サプリメントのプロテインでなく、普通の食事でも効果は同じです。
ただし、その食事に脂質(動物の脂や調理油など)が多いと、吸収が遅くなるので気をつけましょう。
たんぱく質は消化、吸収に2~3時間ほどかかります。運動直前に肉や魚を食べると胃と体に負担がかかり、運動効果も下がるので止めましょう。
フィットネスクラブやジムで、筋トレのあとにプロテインを飲んでいる人も多いです。
運動量の多いアスリートやボディビルダーであれば良いですが、健康維持やダイエットのためにプロテインを飲む必要はありません。
ただし、運動後の食事まで1時間以上空いてしまうようなときは、いったんプロテインでたんぱく質を補って、改めて食事をとるのもよいでしょう。
今回はエネルギーになる3大栄養素の1つである、たんぱく質についてお話いたしました。
たんぱく質は英語でプロテインといい、これは古代ギリシャ語で「生命でもっとも大事なもの」を意味する「プロティオス」を語源としています。
たんぱく質は、糖質も脂質も作り出せるほど重要な栄養素です。
プロテインドリンクやプロテインバーがはやっていますが、筋肉がつく魔法の薬ではないですし、とればとるほどいいものでもありません。
どんなたんぱく質がベストなのか、どのくらい摂取すれば良いのかを知って、賢く活用しましょう。
もっと食事や栄養についてちゃんと知りたい!と思ったあなたは、一度食事&栄養アドバイスを受けてみませんか?